2007/08/16

紋章:ペトロの鍵、闘う獅子、そして開かれた街へ

ライデンの街を歩いていると、繰り返し見かけるものがあります。
"X"を描くように交差する2本の赤い鍵です。

ライデン市内を巡る運河にかかる無数の橋や、街中に散らばる歴史がしみついていそうな建物、観光案内所のパンフレットにも、必ずと言っていいほど鍵のマークが。ときには、鍵の描かれた盾をライオンが支えていることもあります。そのライオンは1頭のときもあれば、盾の両脇に2頭いることも。

写真は、ビュルフト要塞前の門の彫刻(1658年建造)

実はこれ、ライデン市の紋章です。少なくともライデンが都市の特権を獲得した13世紀には、この鍵がライデン市の紋章としてシール(文書に蝋をたらして押す印)に使われていたようです。由来は、ライデン最古の教会、1121年設立の聖ピータース教会(蘭: Pieterskerk)にあります。 聖ピーターとは、日本では聖ペテロと呼ばれるキリスト12使徒の一人。聖書によると、キリストはペテロに神の国への鍵を与えると言ったとか。このことから、ライデンの紋章は聖ピータース教会の聖人ペテロにちなみ、神の国への鍵となったのです。

では、なぜライオンがいたり、そのライオンの数も違っていたり、王冠があったりなかったり、統一されていないのか。 いえいえ、現在では、きちんとライデン市の紋章として定められたデザインがあります。


写真は、市門 Zijlpoort の彫刻(1667年建造)


統一されていないように見えるのは、紋章の歴史が古く、時代により異なるデザインが用いられ、なおかつそれらのデザインの紋章を掲げる古い建物が現在まで残っていて、わたしたちの目に触れるからです。

盾があろうと、王冠があろうと、ライオンがいようと、どの場合でも必ず描かれているのは、交差する2本の赤い鍵。"Sleutel Stad"("sleutel"とは鍵、"stad"とは街のこと)と言えば、ライデンのこと。たとえば、ライデンのニュースを掲載するサイトの名前は Sleutelstad.nl です。
写真は、運河にかかる橋に刻まれた紋章

現在のライデン市の紋章は、冒頭の写真「ビュルフト要塞前の門の彫刻」が一番近いでしょう。交差する2本の赤い鍵が描かれた銀色の盾、その盾を左前足で支え、右前足は金の束に銀色の刃の剣を振り上げたライオン。そして"Haec libertatis ergo(英:This is for freedom)"の文字。
ビュルフト要塞前の門外側には"Pugno pro patria(英:I fight for my country)


ライオンや上記のラテン語の文字が市の紋章としてシール(印)に表れはじめたのは、スペインからの独立戦争を闘った16世紀のことだとか。

紋章とは別に、ライデン市には、市のオフィシャル・ロゴがあります。
紋章の交差する2本の鍵に、開かれた扉を合わせた赤と白のデザイン。鍵はライデンの歴史に加え安全を表し、扉は新しいもの・人を快く受け入れる態度を示しています 目指す姿が明確であれば、日本の自治体もロゴ作りが円滑に進むのでは・・・。


写真は、公共のゴミ箱に描かれているライデン市のロゴ

紋章を見かけたら足を止めてみましょう。2本の赤い鍵は、歴史ある建造物であるしるし。ガイドブックには載っていなくても、逸話の隠れた見どころを目の前にしているに違いありません。


写真は、旧裁判所(13世紀建造)の西側建増部分Vierschaar(17世紀建造)

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2007/07/26

旅行者に親切な街

ライデンは旅行者に親切な街です。

街のところどころに大きな市街地地図があります。

現在地もおしえてくれるので、旅行者の強い味方です。

また、迷いやすい分かれ道には緑の棒に白い旗というかんじのサイン(写真)があり、どっちに行けば何があるかおしえてくれます。
ガイドブックやTourist Informationでもらえる地図(英語とオランダ語の併記)に載っている見どころのオランダ語表記と、サインを見比べてみましょう。

サインに最も頻繁に出てくるのが"Leidse Loper"。いろんな場所で、いろんな方角を指していて、その通り進んでも全然たどり着かない。いったい何処にあるねん!


実はこれ、建物の名称ではなく、ライデンの主要な見どころをまわる街歩きルートのこと。
Leidse Loper (英:Leiden's Walk)に選ばれた見どころのそばには、観光客が見逃すことのないようよう、STOPサインが出ています。その見どころの名称も、STOPサインの上に赤字で書いてあります。
写真は、旧裁判所(蘭:Gravensteen)のSTOPサイン。

見どころには、歴史や逸話などを説明するボードがあります。説明はオランダ語と英語。
両言語とも苦手な場合は説明の横にある絵をじっくり見ましょう。これはという歴史の一場面が描かれていたりして、それだけでも物語が伝わってきます。

写真は、旧裁判所(蘭:Gravensteen)の説明ボード。
絵は、中世に旧裁判所前の広場Gerechtで行われた公開処刑の様子です。


もちろん、"Leidse Loper"以外にも、魅力ある見どころがたくさんあります。
街歩きの際に、茶色のボードを見かけたら、是非立ち止まってみてください。その建造物の由来がオランダ語と英語で説明されています。たまに、オランダ語しか書かれていないときも、建造年を表す数字は分かるはず。

また、英語とオランダ語は同一または似ている単語も少なくないので、school(英:school)= 学校、schip(英:ship)= 船に関係ある建物、などと推測できます。
さらには、近所の人に英語で(もちろんオランダ語でも)尋ねるという方法も。親切な人が多いので、時間が許せば知っていることをおしえてくれるはずです。

ライデンでは、少しくらい迷っても大丈夫。

いえ、むしろ、そのほうが思わぬ発見ができるかも。
説明ボードはなくても、旅人の興味をかきたてる歴史を刻む建物が、いたるところで待ちかまえていますから。

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2007/07/16

静かな生活:聞こえるのは鐘の音

ライデンは静かな街です。

もちろん、駅周辺やショッピングストリートなど、人の集まる場所はそれなりに賑わいがあります。それでも、日本の都会の感覚からいうと、驚くほど静か。

まず、お店が音楽を流していない。
いえ、音楽を流してるお店はゼロではないでしょう、きっと。でも、筆者は今、一店も音楽を流しているお店を思いつけません。
日本のお店は、売物がなんであれ、基本的に音楽がかかっていますよね。中には、テーマ曲まで作っているところも(某ドラッグストアやスーパーマーケットなど)あるじゃないですか。商店街を歩くと、右のお店の音楽と、左のお店の音楽と、はたまたそれらの両隣のお店の音楽が、渾然一体となって襲いかかってきたり・・・。さらに、商店街のテーマソングまで、ダメ押しで聞こえてくることも(とは言え、大阪で戦中の大空襲を唯一生き延びた商店街「千林商店街」のテーマソングは、下町の名曲です)。

カフェやレストランも静かです。日本で音楽のかかっていない喫茶店は、ものすごく少数派ですよね。レストランでも、なにげなく雰囲気のある曲を流していたりするし。
ライデンのカフェは、音楽を流していないせいか(もちろん流しているカフェもあるのでしょうが)、お客さんの会話の声も耳障りなほど大きいということは、まずありません。
そうそう、いかにもバーという感じのバー(半カフェ半バーのようなところでなく)は別です。中には生バンドの演奏を聞きながらビールを傾けるところもあるくらいですから。

さらに、ライデンが静かな理由として、車がクラクションを鳴らさない。ライデンでは筆者は車を運転しておらず、旧市街に相当する比較的車の交通量が少ないところに住でいるせいかもしれませんが、10ヶ月滞在して、クラクションの音を聞いたのは、たった一度だけです。
日本では、何かあると、すぐクラクションを鳴らしていないでしょうか。それも、危険を知らせるなどの注意喚起以外の目的でも。または、注意喚起の場合でも必要以上に長く、もしくは多く。お礼の意味で鳴らすクラクションのせいで、やっと昼寝をした赤ちゃんが目覚めてしまうことが続き、育児ノイローゼになりかけたと嘆く知人も、日本にはいます。

言うまでもなく、選挙が近いからといって、スピーカーから(他言語に訳そうとしても意味がなくてほとんど訳せない)大音量を垂れ流す車が街を巡回するなどということは、ライデンではありえません。

と、ここまでくると、日本に比べてライデンは無音に近い状態なのかというと、さにあらず。市街地内に、毎日、それも日に何度も、響き渡る音があります。市役所の塔の鐘の音です。

15分ごとに鳴る(少なくとも昼間は)この鐘の音にはメロディがついていて、そのメロディも何パターンかあるのですが、筆者が気に入っているのはバッハのメヌエット。もちろん、この鐘の音が、丸の内や梅田や天神に流れても、それはそれで和みをもたらしてくれるでしょう。が、ライデンの赤レンガと石畳の町の中で聞くと、時の流れまで緩やかになっったかのよう。日々の喧騒など遠のき、数百年の時を遡るような感覚は、ライデンの魅力をいっそうひきたたせてくれます。

ちなみにオランダ語の klok には、英語での clock の他に bell の意味もあります。人々が腕時計など持たず、家にも時計などなかった長い期間、教会や市役所の鐘が人々に時を知らせてくれていたからでしょう。余談ですが、定期的に(鐘や鳩の鳴き声などで)時を知らせてくれる時計を、もともと clock と読んでいたそうです。今では、一日に一度目覚めのときくらいにしか鳴らず、感謝もされず(アラームを止めるため)叩かれる clock がほとんどですが。

ライデンの街を訪ねることがあったら、15分ごとに響く鐘の音にも耳を傾けてみてください。市役所を取り巻く市街地内のかなりの範囲で聞こえます。ゆっくり鐘の音を楽しみたい場合は、Nieuwe Rijn沿いなど市役所近くのオープンカフェに腰を下ろして待つのもいいかもしれません。これなら聞き逃すことはありえません、カフェには邪魔になる音楽はかかっていませんから。

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2007/06/21

オランダ滞在許可の申請結果は?

ライデン市役所で滞在許可申請をすると、6か月以内に審査結果に関する手紙がライデン市役所から郵送されてきます。文面はオランダ語ですが、解読すると「審査の結果、滞在許可がおりたから、滞在者カードを3ヶ月以内にライデン市役所まで取りに来るように」とのこと。ライデン市役所に足を運び、この手紙とパスポートを提示すると、滞在者カードをもらえます。
オランダ滞在許可、ついに取得!

となるはずなのですが。なかには6か月経っても、全く音沙汰なし、手紙一通届かない場合があります。その際の対処法ですが、INDではなくライデン市役所へ行きましょう。 その理由は:

滞在許可申請の審査の窓口はライデン市役所であるものの、実際に審査を行っているのはIND(オランダ移民局)。INDのホームページで、滞在許可申請に関する問い合わせの電話番号を見つけ(個別の申請に関するメールでの問い合わせは受け付けていません)、早速電話してみました。これが、大きな間違いでした。

まず、待ち時間が長い。複数の部署に転送される間の(まさに「たらいまわし」)待ち時間が長い。
次に、「Dossier numberをおしえてください」と言われる。が、そんな番号は知らされていない。
あるINDの対応者によると「Dossier numberはアプリケーションフォームの裏に書いてある」らしい。もちろん、アプリケーションフォームは申請時に提出するものだから、現在はINDにあって申請者の手元に残っているわけがない。
別のINDの対応者によると、「INDから申請者に送った手紙に書いてある」らしい。が、この電話をかけたそもそもの理由が、申請から6ヶ月を過ぎてもINDから手紙一通届かないというもの。加えて、審査結果を受け取った人たちも、INDからではなくライデン市役所から手紙を受け取っていて、INDからは何も送られてきていない。すると、その対応者は
 “I don’t believe you. You must have the letter from IND.”
もちろん、別の部署へ転送。そして、ありがちなことに転送の待ち時間中に突然電話が切れました。もう一度、最初から、全く同じプロセスのやり直しです。

とうとう3度目(2度目ではなく)の電話の待ち時間中、このIND電話が30分以上に及んでいることに気付き・・・。こちらから電話を切りました。

では、ライデン市役所はどうかというと。
Informationで滞在許可申請から6か月経っても審査結果が来ないことを説明すると、すぐ横の別の担当者がパスポートから審査状況をオンラインで確認してくれました。
「あなたの滞在許可申請は、まだ審査中ですね」
「では、今は審査結果を待つしかないということですか」
「ええ」
「滞在許可申請時にもらったステッカーの有効期限が6か月で切れてるんですが」
「それなら、担当の窓口でステッカーの再発行の手続きしてください。」
と、笑顔で番号札を渡されました。
再発行の手続きもあっという間。あまりの、あっけなさに前日のINDとのやりとりが悪い夢だったのではないかと思ったほどです。

あとで分かったことですが、INDへのクレームの仕方を詳しくおしえてくれる英語のサイトが存在するほど、INDの電話窓口の評判は芳しくないようです。オランダの人は、愛想がよく親切。という、ここ数ヶ月で強固になった思いに、もう少しでくさびを打ち込まれるところでしたが、ライデン市役所の親切な対応に救われました。
そうそう、ライデン市役所への問い合わせですが、滞在許可申請から6か月を過ぎていない時点では、ライデン市役所ではどうすることもできません。市役所へ出向くのは、6か月を過ぎてからにしましょう(もちろん、このような事態に陥らないほうがよいのですが)。

ちなみに、再発行してもらったステッカーの有効期限は6ヶ月先で、日本への帰国予定日の2ヶ月後です。「滞在許可申請中」のまま、オランダを去ることになるかも。それもオランダらしいか。

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2007/04/28

自転車泥棒

オランダと言えば、風車。運河。そして、自転車。
およそ人が住んでいる場所で、自転車を見ないでいることは不可能ではないかと思うほど、自転車が走って、または止められています。街を軽やかに探検するにしろ、郊外の牧場に仔羊を見に行くにしろ、オランダ生活を満喫するためには、自転車は必需品です。筆者も、オランダ到着後しばらくして、ディスカウントショップで自転車を購入しました。

が、ある冬の夜、ついにオランダ生活の真のイニシエーションを経験することに。
夕方からの集まりが終わって外は真っ暗。街灯に照らされたフェンスに近づくと。
ない。錠でくくりつけていたはずの自転車がない・・・。
えええっ。集まりは1時間半。この場所に自転車が止めてあったのも、せいぜい1時間35分。筆者の自転車の両側には、他の参加者の自転車が並んでいる。何故、筆者の自転車だけが消えているのか? 幸い、住んでいるアパートメントまでは徒歩でも10分。冬の夜を何時間も歩いて・・・という最悪のシナリオは避けられるけれど・・・。

無性に口惜しくなり、無駄とは知りつつも、周辺に移動させられていないか見て周ることに。ない。当然ながら、ない。そう言えば、オランダでは錠のかかっていない自転車は公共交通機関とみなされると、オランダ関係の本に書いてあった覚えが。ひょっとしたら、駅まで誰かが乗っていったのかも、と思いついてしまいました。どうせ、このまま家に帰っても、やりきれない気持ちに鬱々とするだけ。それならばと、Leiden Centraal駅に打ち捨てられていないか見に行くことに。

道すがら、周辺の自転車を確認していて、2つのことに気付きました。いたるところに、数えきれない自転車が止めてあるということ。そして、大量の自転車の山の中から探し出せるほど、自分の自転車の特徴を自分が把握していないということ。受験英語で覚えた"a needle in a haystack"が初めて現実の意味をもったことばとして響いたのは、このときです。Leiden Centraal駅には、自転車屋さんがあります。中古自転車の販売もしているので、念のためカウンターのおじさんに訊いてみました。
「さっき自転車を盗まれてしまったのですが、誰か自転車を売りに来た人はいませんでしたか」
「盗まれた自転車は、この店では買いませんよ」
予想通り、自転車を見つけらられないまま、この日は家に帰りました。

翌朝、警察署へ行きました。カウンターの警察官に自転車を盗まれたことを伝えると、盗難届けを作成してくれました。盗難の時間、場所、自転車のマーク(フレームに描いてある文字)を説明し(筆者の住むアパートメントに筆者と全く同じ自転車に乗っている人がいるので、その自転車の写真をデジカメで撮ってきていたのが役立つことに)、パスポートとライデンへの住民登録の書面を提示しました。最後に、サインをして盗難届の作成は完了。
「警察が自転車を見つけた場合には、連絡をします。ただ、見つかる可能性は、かなり低いですよ」
その後、数日は自転車を確認しながら街を歩くようになってしまいました。

そして、ある日、天啓が。自転車泥棒のことを友人に話したところ
「保険でカバーされるんじゃない?」
早速、渡蘭前に加入した損害保険の説明書を、引っ張り出して読み直しました。 日常生活の動産の盗難に対して、補償は・・・。
あり!
早速、保険会社のアムステルダム支店に電話をし、申請書に盗難届と自転車購入時のレシートを添えて、提出することに。数週間かかりましたが、無事保険金が日本の口座に振り込まれました。

そして、自転車ですが。
オランダでは、1月の最終週に売り尽くしセールがあります。ライデンのデパートV&Dで、盗まれた自転車よりも上等(とは言っても低レベルでの比較)かつ安い自転車を発見し、購入しました。そうそう、自転車の錠にさすオイルも買いました。錠をかけていた自転車がどうして盗難可能だったのか、その一つの可能性として、錠のすべりが悪く、しっかりかかっていなかったせいではないかと考えたからです。

春の訪れとともに、自転車に乗る機会も増えました。週末には遠乗りもしています。

新しい自転車は、まだ盗まれていません。

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2007/02/14

図書館の利用は有料?

図書館。学校のものにしろ、地域のものにしろ、時間が許す限りヘビーユーザであった筆者。 そんな筆者がライデンに着いて最初に確認したことの一つが、図書館の利用方法でした。 布団の中で本を読まないと眠りにつけないという難儀な習慣のせいです。

大学の図書館。
これは大学の関係者であれば、閲覧および借出が可能です。 大学の関係者でなくても、図書館に入ることはできるので、開架図書の閲覧はできます。 しかし、眠りに誘ってくれそうな軽めの小説(英語)は、大学の図書館には置いてないことが判明。
筆者が通っていた日本の大学には、書店で平積みされているような推理小説まであったのに。 アメリカの州立大学にも、ベストセラーのペーパバックが並んでいたのに。 ひょっとしたらオランダ語の現代小説があるのかもしれないけれど、さすがに辞書を片手に布団に入るのは・・・。

公共図書館。
ライデンには市立図書館が複数箇所にあります。
市街地近くに住んでいる筆者にとって、最も近くて便利なのは中央図書館(蘭:Centrale Bibliotheek)。ビュルフト要塞(蘭:burcht)のすぐ前というライデンの歴史的中心の場所にあるだけあって、煉瓦造りで中庭のある立派な建物です。もちろんオランダ語の書籍に加え、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語の本(外国語書籍は主に小説)も外国語書籍のコーナーに並べられています。筆者の好みの作家の本も数冊あるのを発見しました。

が、ここで一つ問題が。
オランダの図書館は、有料なのです。
ライデンの場合、まず会員になるのに€ 28。
会員になれば、書籍の借出は無料ですが、CDやDVDの借出、図書館内でのインターネットの利用には、その都度料金を支払わなければなりません。また、借出期限を超過すると、その日数分、超過料金が科されます。

筆者の場合、借りて読みたいと思う本はせいぜい数冊。それなら、図書館の会員になるより気に入った本を購入したほうがいいか、という結論に達しました。
とは言え、座り心地の良い椅子や陽射しの暖かい静かな中庭、ビュルフト要塞を正面に臨む窓からの景色に誘われて、図書館には足を運んでいます。図書館内にあるカフェのコーヒーとともに、何百年という歴史のある建物に囲まれて、ちょっと気になる本や雑誌に目を通す週末の昼下がり。これもライデン生活の醍醐味の一つかも。

ところで、最初はショックでさえあった公共図書館の有料制度。ある意味、理にかなっているようにも思えます。
まず、利用者負担というところが明快です。もちろん、市の予算も注ぎ込まれているでしょうから、税金という形で図書館を利用していない人も経費の一部を負担していることになるのでしょう。それでも、筆者の知る日本の市立図書館のように、全ての経費を市の予算で賄うというのとは、異なります。
そして、延滞に対して超過料金が科されるのも納得です。筆者が子どものころ過ごした地域の図書館は、本を期限までに返さないと、しばらく本の借出ができなくなるという罰則がありました。しかし、その後引っ越した先の図書館は、3週間近く期限を過ぎているのにペナルティが全くなく、驚いたものです。延滞という行為によって、より多くの人が(公共の資源となった)本を利用する機会を妨げたのですから、相応のペナルティが科されるのは当然と言えるのでしょう。もちろん、ペナルティの存在により、期限通りに本を返却するという利用者のマナー向上が期待できることは言うまでもありません。
そうそう、年齢や経済状況に応じて割引・無料となる仕組みが用意されていることを言っておかなければ。18歳未満は無料、65歳以上は€ 18で会員になれます。週末には、子ども連れのパパ・ママが多いわけですね。

また、数ヶ月に1度の割合で、いらなくなった図書館の本・雑誌を販売するboekenmarktも開かれています。前回は、大人向けの本は1冊€ 1、子供向けの本は一冊€ 0.5で販売されていました。この機に、絵本を大人買いする若い親も。

ライデンの中央図書館。機会があれば、立ち寄ることをお勧めします。立ち寄るだけなら、有料ではありませんから。

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2007/01/11

銀行口座開設に必要なのは?

銀行口座開設のポイントの一つは、どの銀行のどの支店に行くかです。そして、必要書類・情報を把握しておくことも。

ライデン大学の新聞"Mare"の英語版記事でも指摘されているように、international studentが銀行口座をし解説しようとしたときに、銀行や支店(場合によっては担当者)により必要書類や所要時間が異なるという話が聞かれます。また、2006年秋に銀行側が口座開設時のルールを、より厳しく変更したため、全ての銀行の担当者に必要書類等の情報が周知されていないということもあるようです。
ライデンには、大手ではABN-AMRO、Fortis、ING、Roboなどの銀行があります。この中で、英語でインターネットバンキングのサービスを提供している(2006年秋時点)ABN-AMROで、筆者は口座を開設することに。

まず、ABN-AMROのホームページで必要書類を確認。と、オランダ滞在許可が必要と書いてあります。もっともとは言え、それではあまりに不便。筆者の場合、到着から滞在許可を申請するまでに約2ヶ月。さらに、申請から許可が下りる(または拒絶される)まで最長6か月。これでは、最悪8ヶ月の間、オランダでの銀行口座なしで生活、つまり日本の銀行口座から割高な手数料(約3%)を払ってATMからお金を引き出し続けなければならないということに。そんなん、日本の銀行がおいしいだけやんか。

そこで、銀行の窓口に行き、口座開設に滞在許可が必要かどうか尋ねてみました。
「銀行口座を開設したいんですけど、オランダの滞在許可はまだ取得してないんです」
「銀行口座開設には、滞在許可が必要です」
やはり・・・。

ということで、次に銀行を訪れたのは、滞在許可の申請(取得ではありません)が終わった翌日。滞在許可はまだもってないけど、正規の手続きを踏んだんだから、当たって砕けろやね。
「銀行口座を開設したいんですけど」
とInformationの窓口で伝えると、担当者が来るまで待つように言われました。待つことしばらく。ようやく担当者が現れ、銀行口座を開設したいことを伝えました。
「どの種類の口座を開設希望ですか」
そう、オランダの銀行は手数料や利率の異なる様々な口座を用意していて、顧客はその中から自分にあったものを選ぶのです。ホームページでの予習の成果を披露しなければ。
「Student Packageがいいんですが」
「international student向けのStudent Packageは当支店では扱っていないんです。Breestraatの支店に担当の窓口がありますから、そちらへ出向かれてはどうでしょう」
なるほど。なんでも、筆者が足を運んだLeiden Centraal駅前の支店ではなく、Breestraatの支店にStudent Loungeがあるのだとか。

Breestraat支店へ行きました。と、2階(オランダでいう1階)にありました、Student Lounge。
「銀行口座を開設したいんですけど」
「どうぞ、そちらにかけてください。コーヒーはいかがですか」
とスムーズに始まり、あっという間に手続きが進んでいきます。
■必要書類は:

・パスポート
・ライデン市へRegistrationを行ったことを示す書類(滞在許可申請時にもらえる)
■必要でなかった情報・書類は:
・Sofi number(税金支払のための番号)  
  オランダ国内で所得がないことを伝えると、ダミー番号で処理
・滞在許可  
  申請しただけで取得はしてなかったんです、この時点では

「日本の銀行から送金するので、SWIFT numberとIbanをおしえてください」
この2つの番号は銀行、支店、口座を特定するもの。おさえておきましょう。筆者は、郵送で日本のCiti Bankに海外送金先登録をし、口座開設の5日後、Citi BankのInternet BankingでCitiの口座からABN-AMROの口座に、生活費を送金しました。


1週間後、Wereldpasと呼ばれる3つの機能(ATMカード、デビットカード、電子マネー)をもつカードが送られてきました。これを、銀行の支店に持っていき、activateしてもらうと、使用可能に。Internaet BankingもWereldpasが必要なので、ようやく始められることに。さっそく、InternetSaving Accountという利率の良い(2006年秋で2.4%)の口座を開設したり、家賃の振込先を登録したり。


銀行口座も無事開設し、ようやく一般市民として認められたような気分になった筆者。これからは、ライデン生活を満喫するための情報を中心に掲載します。

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2006/12/17

滞在手続き Registrationは3日以内?

オランダに滞在する外国人は、オランダ到着後3日以内に警察署(蘭:Politie Bureau)に届け出る(Registrationを行う)必要があります。

という情報を得て、オランダ入国3日目に、近所の警察署へ足を運ぶことに。警察署の場所は、当時、滞在中の部屋にあった電話帳の地図で確認していたので、すぐわかりました。電話帳の地図には、警察署と郵便局の位置が載っているので、結構便利ですよ。

さて、入口を入ると受付カウンターのようなところがあり、女性警察官がにこやかに出迎えてくれました。
「3日前にオランダに来て、1年滞在の予定なんですけど、Registrationはここで行うのですか?」
と英語で尋ねると、
「RegistrationはForeign Policeに電話して行ってください。この紙に電話番号が書いてありますから」
と、すぐさま英語に切り替えて、蘭英2ヶ国語でRegistrationについて書かれたプリントを渡してくれました。

受付時間の関係で、翌日、プリントに書かれたForeign Policeに電話してみました。
「4日前にオランダに来て、1年滞在の予定なんですけど、Registrationはここで行うのですか?」
「4日前? 3日以内にRegistratonしないといけないんですよ。ところで、滞在期間は?」
「1年間です」
「ああ、ここは3ヶ月未満の滞在のRegistrationをするところなんです。1年だったら、今から言う番号に電話してください」
と、新しい電話番号をメモすることに。

さて、続けて新しい電話番号に電話してみました。
「4日前にオランダに来て、1年滞在の予定なんですけど、Registrationはここで行うのですか?」
市役所へは行きましたか?」
「はい。チェックインを行って、滞在許可申請のためのアポイントメントを電話でとりました。」
「それだったら、ここでRegistrationする必要はありませんよ。滞在許可申請の日に、市役所でRegistrationすることになりますから。まとめて市役所が手続きを行ってくれますよ」

そんな! ほっとするとともに気が抜けたのも事実。
つまり、3ヶ月以上の滞在の場合は、滞在許可申請もRegistrationも、同じ日に市役所で行うので、別途、警察に出向く必要はなかったのです(少なくとも2006年秋のライデン市では)。
とは言え、いろいろあって(詳しくはこちら)滞在許可申請と同時にRegistrationを行ったのは、オランダ入国から約2ヵ月後。最初の"3日以内"とは、えらい差があるような・・・。

約2ヵ月後、Registrationも無事終わり、向かったところは銀行。そう、世の中、お金なしには何もできませんからね。次回は、オランダでの銀行口座開設について紹介します。

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2006/12/12

滞在手続き 滞在許可 寛容が美徳

オランダ滞在手続きの第1歩は、市役所でチェックインすること。受付で滞在手続きをしたいと伝えると、その場でCheck-In Letterを作成してくれます。Check-In Letterに記載されている番号に電話して、滞在手続きのアポイントメントを取るように言われ、滞在許可のApplication Formを渡されて、その場は終わりです。


さて、筆者は、すぐに電話しました。日本人は3ヶ月間は手続きなしで滞在できるとはいえ、長期滞在を目的にしてるのは明白なんだから、疑いを招かぬよう早めに手続きするにこしたことないですよね。で、電話をすると、住所や名前を訊かれ、そして伝えられたアポイントメントの日にちは、
「え?! 1ヶ月以上先?!」
なんでも、とても混み合っているのだとか。筆者の所属先のオランダ人は、「1ヶ月以上先? まあ、だいたいそんなものかな」という反応でした。
うーん、さすがは多くの異国人を受け入れているオランダ。


しばらくすると、"Appoint Certification"が郵送されてきました。開けてみると、
「名前が違う!」
確かに、音声的には似た表記だけど、パスポートの表記とは苗字も名前も違う。電話で聞き慣れない名前を書き取った結果とはいえ、滞在手続きの日には必ず持参するようにと言われている書類。名前が違っていていいのだろうか? うーん、と少し悩みました。でも、これしかないのだし、Check-In Letterの名前は正確だから、どうにかなるだろうと思うことにしました。

そして、滞在手続きの日。どうにかなりました。受付に行ってCheck-In LetterとAppoint Certificationを提示すると、どうやら最初からややこしい名前で確認するのではなく、日時から情報を確認し名前と照合するらしく(それも細かいスペルチェックはないらしく)、問題なく番号札を渡されました。疑われたらどうしようと少しは心配していたのですが、疑いなど無縁の対応でした。
うーん、やっぱりオランダやね。


さて、ようやく筆者の番になり、Application Formを差し出すと、
「これは、日本人用のApplication Formじゃないですね」
「え?! チェックインのときにパスポートを提示してもらったものなんですけど・・・」
Application Formには"with MVV(3ヶ月以内の短期滞在許可必要な人用)"と"without MVV(3ヶ月以内の短期滞在許可必要でない人用)"の2種類があります。日本人は後者で滞在許可申請をするのですが、筆者が手にしていたのは前者。「新しくアポイントメントを取り直しましょう」と、その場で手続きしてくれたのですが、
「え?! 1ヶ月近く先?!」
筆者は構わないけど、オランダとしてはそれでいいのでしょうか。・・・それでいいみたいです。
うーん、ほんまに寛容が美徳の国、オランダやわ。


2度目のアポイントメントの日は、さすがにすんなり手続きが進みました。ライデン市役所から移民局に書類を郵送し、6か月以内に返答が郵送されてくるのだとか。ちなみに、この滞在許可(VVV)申請の日に、ライデン市へのRegistrationも一緒に行います。次回は、このRegistrationの顛末について、紹介します。

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2006/12/10

渡蘭準備 アポスティーユは何通必要?

オランダに労働・就学・研修などの目的で長期滞在するのに、昔のように在日オランダ大使館からビザの発給を受ける必要はありません。そのかわり、戸籍謄(抄)本(Birth Cietificate:出生証明書として使用)を日本(オランダではなく)の外務省に提出し、アポスティーユ証明(英:Apostille Stamp)と呼ばれるA5くらいの付箋をつけてもらいます。
※ 手続きの流れや必要書類、窓口などについては『Welkom in Leiden』のオランダ滞在手続きのページを見てください。

このアポスティーユですが、オランダ到着後に在蘭日本大使館で翻訳してもらったあと、①オランダ滞在許可申請に加え、②警察へのRegistrationに必要ということでした。つまり、少なくとも2回は必要ということです。ここで悩んだのが、渡蘭時にアポスティーユ証明を2通携えていないといけないのかということでした。もし①と②の両方に、コピーでなくオリジナルの提出が必要なら、アポスティーユ証明取得時(@日本の外務省)か翻訳時(@在蘭日本大使館)でのアウトプットが2通でなくてはなりません。 そこで、関係3機関に問い合わせました。

1)外務省へ電話

   「日本でアポスティーユ証明を1通発行してもらい、その1通をもとに
    在蘭日本大使館で翻訳を2通作ってもらえますか?」
   「在蘭日本大使館ではどう言ってるんですか?」
   「ホームページを見たんですが、翻訳1通に対して複数翻訳が出るかは

    書いてないんです」
   「2通必要なんですか」
   「オランダでは、滞在許可申請とregistrationで2通必要らしいんです」
   「じゃあ、アポスティーユは2通申請ですね」
   「え!? 翻訳2通にはアポスティーユ2通必要なんですか?」
   「そうです」
という返答でしたが、それまでの受け答えの様子から、よくわかってないんじゃないかと疑っていたので、他の2件の問い合わせ結果を待つことにしました。

2)在蘭日本大使館へメール
自動返答メッセージが送られてきました。メールでの問い合わせには答えられないから、電話するようにと。
少し不安になって、この時点で戸籍抄本の請求をはるばる遠い故郷の役場にしました。既に1通は取り寄せていたのですが、2通目のアポスティーユ申請が必要な場合に備えてです。


3)ライデン市役所へメール
メールを出してから1週間ほどして、担当の方から返信がきました。①②とも、オリジナルを提出してくれたら市役所側でコピーするので、オリジナルは1通のみで良いと。簡潔だけど丁寧な文面(英語)で、最初の2件に冷たくあしらわれただけに、感謝の気持ちも倍増です。一方、気がかりだった重要事項が一つ片付いてほっとした反動で、日本のお役所体質に怒りが新たになったことは言うまでもありません。


まず、外務省の担当の人。わからないならわからないと言って、わかる担当部署(この場合はアポスティーユ翻訳をしている多くの大使館の一つかもしれませんが)に紹介するなりすべき。それなのに、わからないまま居丈高に適当に返答して、結果として誤った情報を伝えるなんて、一般企業ならありえないですよね。在蘭日本大使館も、電話がOKならメールでも良さそうなものなのにと思えます。メールが殺到して答えきれないというなら、もう少しホームページを充実させて、主要な疑問はホームページで解決するようにしてもらえないものでしょうか(筆者の疑問はマイナーな部類だったのかもしれないけど)。とくにアポスティーユ関係のFAQは、アポスティーユ証明を採用してる多くの国の大使館と共通でつかえる部分もあるはずだし。

アポスティーユは何通必要か? 1通です。少なくとも2006年10月のライデン市では。


ちなみに、日本からアポスティーユを1通持っていけば、それの提示で在蘭大使館で複数の翻訳を作成してもらえます。


渡蘭前から、メールを通して親しみを覚えていたライデン市役所。次回は、ライデン市役所をメインの舞台に、ほんとにこんなのでいいの?といろんな意味で思ったオランダ滞在手続きについて紹介します。



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2006/12/09

「ライデン探検記」は何故ホームページから分かれたか

このブログ『ライデン探検記』は、筆者のホームページ『Welkom in Leiden』から派生したものです。

Welkom in Leiden』は、筆者がオランダ滞在を始めたときに「これがもっと早くわかっていれば・・・」と口惜しくなったり、「これはぜひ多くの人に知ってもらいたい」と感じた情報を、できるだけ簡潔にテーマごとに紹介しています。その結果、筆者個人の困ったり、良かったと感動したりしたエピソードは、大部分削ってしまいました。それが、ホームページ作成の最初の動機だったんですが。

というわけで、筆者個人のエピソードに沿った情報を勝手に発信する場として、このブログ『ライデン探検記』を立ち上げます。内容は、主に以下のようになるはずです:

  • 筆者のエピソードをまじえたライデン(場合によってはオランダ)滞在に関するお役立ち情報
  • 「ライデンを知らないなんてもったいない!」という筆者の思いを込めたライデンを楽しむ情報
  • ライデンで目にするオランダの価値観と、それに基づく人々の生活の様子を描いた雑記

次回は、ライデン探検を始める前、日本での準備中に身に染みて感じた日本のお役所体質と、対照的なライデン市役所の対応を紹介します。

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