2007/04/28

自転車泥棒

オランダと言えば、風車。運河。そして、自転車。
およそ人が住んでいる場所で、自転車を見ないでいることは不可能ではないかと思うほど、自転車が走って、または止められています。街を軽やかに探検するにしろ、郊外の牧場に仔羊を見に行くにしろ、オランダ生活を満喫するためには、自転車は必需品です。筆者も、オランダ到着後しばらくして、ディスカウントショップで自転車を購入しました。

が、ある冬の夜、ついにオランダ生活の真のイニシエーションを経験することに。
夕方からの集まりが終わって外は真っ暗。街灯に照らされたフェンスに近づくと。
ない。錠でくくりつけていたはずの自転車がない・・・。
えええっ。集まりは1時間半。この場所に自転車が止めてあったのも、せいぜい1時間35分。筆者の自転車の両側には、他の参加者の自転車が並んでいる。何故、筆者の自転車だけが消えているのか? 幸い、住んでいるアパートメントまでは徒歩でも10分。冬の夜を何時間も歩いて・・・という最悪のシナリオは避けられるけれど・・・。

無性に口惜しくなり、無駄とは知りつつも、周辺に移動させられていないか見て周ることに。ない。当然ながら、ない。そう言えば、オランダでは錠のかかっていない自転車は公共交通機関とみなされると、オランダ関係の本に書いてあった覚えが。ひょっとしたら、駅まで誰かが乗っていったのかも、と思いついてしまいました。どうせ、このまま家に帰っても、やりきれない気持ちに鬱々とするだけ。それならばと、Leiden Centraal駅に打ち捨てられていないか見に行くことに。

道すがら、周辺の自転車を確認していて、2つのことに気付きました。いたるところに、数えきれない自転車が止めてあるということ。そして、大量の自転車の山の中から探し出せるほど、自分の自転車の特徴を自分が把握していないということ。受験英語で覚えた"a needle in a haystack"が初めて現実の意味をもったことばとして響いたのは、このときです。Leiden Centraal駅には、自転車屋さんがあります。中古自転車の販売もしているので、念のためカウンターのおじさんに訊いてみました。
「さっき自転車を盗まれてしまったのですが、誰か自転車を売りに来た人はいませんでしたか」
「盗まれた自転車は、この店では買いませんよ」
予想通り、自転車を見つけらられないまま、この日は家に帰りました。

翌朝、警察署へ行きました。カウンターの警察官に自転車を盗まれたことを伝えると、盗難届けを作成してくれました。盗難の時間、場所、自転車のマーク(フレームに描いてある文字)を説明し(筆者の住むアパートメントに筆者と全く同じ自転車に乗っている人がいるので、その自転車の写真をデジカメで撮ってきていたのが役立つことに)、パスポートとライデンへの住民登録の書面を提示しました。最後に、サインをして盗難届の作成は完了。
「警察が自転車を見つけた場合には、連絡をします。ただ、見つかる可能性は、かなり低いですよ」
その後、数日は自転車を確認しながら街を歩くようになってしまいました。

そして、ある日、天啓が。自転車泥棒のことを友人に話したところ
「保険でカバーされるんじゃない?」
早速、渡蘭前に加入した損害保険の説明書を、引っ張り出して読み直しました。 日常生活の動産の盗難に対して、補償は・・・。
あり!
早速、保険会社のアムステルダム支店に電話をし、申請書に盗難届と自転車購入時のレシートを添えて、提出することに。数週間かかりましたが、無事保険金が日本の口座に振り込まれました。

そして、自転車ですが。
オランダでは、1月の最終週に売り尽くしセールがあります。ライデンのデパートV&Dで、盗まれた自転車よりも上等(とは言っても低レベルでの比較)かつ安い自転車を発見し、購入しました。そうそう、自転車の錠にさすオイルも買いました。錠をかけていた自転車がどうして盗難可能だったのか、その一つの可能性として、錠のすべりが悪く、しっかりかかっていなかったせいではないかと考えたからです。

春の訪れとともに、自転車に乗る機会も増えました。週末には遠乗りもしています。

新しい自転車は、まだ盗まれていません。

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